せん妄


 総合病院における精神科診療で最も重要となる疾患の一つが「せん妄」です。
 一般の精神科外来ではそれほど頻度は高くないのですが、総合病院入院患者においてはおよそ2割程度にみられるものと言われておりかなり頻度の高い疾患となります。当院でも、当科の診療の中では一番時間と労力を注いでいるのが「せん妄」であるため、これについて簡単な説明をしたいと思います。

1.せん妄について
 せん妄状態を分かりやすく言うと、何らかの原因で脳の働きが鈍り、「寝ぼけ」のような状態が続いているものと考えると理解しやすくなります。半分現実、半分夢の中にいるような状態であり、現実と夢が混ざっているような言動を多く認めます。ぼやけた言動だけでなく、場合によっては幻覚・妄想・興奮状態となり、大声で騒いだり、暴れたりすることもあります。本人にその間の記憶はほとんどないことが多く、専門的には「意識障害」であり、認知症やうつ病、統合失調症などとは全く別のものです。基本的には原因が解決すれば治るのですが、稀に原因が解決しない場合は何カ月も続くことがあります。


2.せん妄を疑うサイン
・会話の反応が鈍い。ボーっとしている。
・時間や場所が分からなくなっていたり、自分の置かれている状況が分からない。
・記憶が抜けていたり、曖昧。判らないのをごまかす。
・つじつまの合わないことを言う。訴えが多く、一貫しない。
・目つきがおかしい(うつろ、険しい、ギラギラなど)。
・入院中なのに家に帰ろうとしたり、仕事に行こうとする。
・人、虫、火などが見える。空中をつかむ動作、シーツや布団の上を掃うような動作。→幻視を疑う
・点滴、心電図などのチューブ類・コード類を意味不明にやたらといじる。  
特に夕方から夜間に不穏・興奮・落ち着かない状態となることが多く、日中はボーっとしていることが多い傾向があります。


3.せん妄の原因
主なものとして下記のようなものがあります。
・脳疾患(脳腫瘍、脳膿瘍、脳梗塞、脳浮腫など)
・全身状態が悪い(低栄養、低血圧、呼吸不全、脱水、発熱、貧血、血糖異常、手術後など)
・電解質異常(高カルシウム血症、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症など)
・肝性脳症(高アンモニア血症、肝不全)
・薬剤性(麻薬、抗不安薬、睡眠薬、抗コリン薬、抗パーキンソン病薬、ステロイド剤など)
・昼夜逆転(痛み・頻尿・周りの音などによる睡眠妨害、薬剤による昼間の眠気)
・アルコール離脱(毎日飲酒している人が入院などで飲酒を止めると2~3日後に出現)
特に高齢者には出現しやすく、入院という環境変化だけでせん妄になる方も多くみられます。


4.治療
他科と連携して原因の解決を図りつつ、不穏・不眠には向精神薬を使います。

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