中高年のひざの痛み -変形性ひざ関節症-

Knee osteoarthritis

中高年のひざの痛み -変形性ひざ関節症-

1.変形性ひざ関節症とは

中高年のひざの痛みの原因は、ほとんどが変形性ひざ関節症です。ひざの上の骨と下の骨がこすれ合う表面を覆う軟骨(関節軟骨)が徐々にすり減ってくるために起こる病気です。変形性ひざ関節症は体質、年齢(50歳以上)、性(女性の方が男性より多い)、肥満(標準体重より4倍かかりやすくなる)、筋肉が弱さ、などでこの軟骨が徐々にすり減って行きます(下図:特に内側)。高齢化している我が国では、現在患者さんの数は2,000万人を超えています。

このような状態になると関節表面は滑らかではなくなり、ザラザラ、ゴツゴツとなり、動かすと互いに摩擦が生ずるようになり、これが原因でひざ関節に炎症(痛む、熱を持つ、腫れる、水がたまる等)が生じてひざ関節症となるのです。

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2.治療法について

ひざ関節症を原因からすっかり治してしまう方法は今のところありません。また、ひざ関節症は5年~10年と長い年月をかけて徐々に初期から中期、中期から末期へと進行してしまうこともあります。しかし、適切な治療を行えば痛みはとれ、進行もせずにずっと平穏な日常生活を送ることは可能です。それにはひざ関節症は生活習慣病の一つですから、病院の治療とともに、自宅での生活の仕方、適切な運動、食事や自分で行う対処法が大変大事です。その中心となるのが運動(リハビリ)療法です。

運動と言ってももちろん、走ったり、屈伸したりする方法ではありません。穏やかに脚を上げたり、下ろしたり、痛くなく、誰でも簡単に行える方法です。この方法を行えば、まず2~3週間のうちにひざ関節症の痛みや腫れはとれていきます。その効果は抗炎症剤(痛み止め)や関節注射(ヒアルロン酸)などよりも効果があることは証明されています。

そして、この運動療法を継続していけば徐々に下肢の筋肉や関節は強化されて、痛みが再発しにくくなる予防法にもなります。NHKテレビの「ためしてガッテン」や「たけしの健康家族」で黒澤が出演して「脚上げ体操」などを紹介しました。順天堂病院では、もう20年近く前から行っていて、多くのひざ関節症に悩む方々から感謝されている方法です。

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  • 関節症が進行してしまった末期関節症の方(O脚が著しい方)では、この方法の有効性は低下します。それでも痛みは和らぎ、筋肉が強くなって脚がしっかりするなど、行って損はしない方法です。
  • 診察では、黒澤がこのやり方を直接お教えし、イラスト入りのパンフレットもお渡し、自宅で毎日行っていただきます。この方法を行えばもう、お薬(抗炎症剤)や関節注射(ヒアルロン酸)はやらなくて済むようになります。
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3.手術について

ひざ関節症が進行してしまって、ひざがO(オー)脚に変形してしまい、近くのスーパーへの買い物も大変になったような方には手術をお勧めします。手術は、人工関節手術が最も確実な方法です。この方法によって、痛みは確実にゼロになります。人工関節とは、すり減った関節の表面を金属性の関節の形をしたもので置きかえる、虫歯の治療でいえば「さし歯」のような方法です。

現在では80歳を過ぎた方でも安全に行えます。手術後1週間以内に、手術したひざもついて歩き始めるようになります。入院期間は、リハビリも入れて3週間前後です。黒澤は毎年60~80人の方に、この手術を行ってきています。

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人工膝関節のレントゲン写真