Knee osteoarthritis
変形性ひざ関節症
1.変形性ひざ関節症とは
中高年の膝の痛みの原因のほとんどが変形性膝関節症です。膝の上の骨と下の骨がこすれ合う表面を覆う軟骨(関節軟骨)が徐々にすり減ってくるために起こる病気です。高齢化している我が国では、現在患者さんの数は2,000万人を超えています。変形性膝関節症は体質、年齢(50歳以上)、性(女性の方が男性より多い)、肥満(標準体重より4倍かかりやすくなる)、筋肉が弱さ、などでこの軟骨が徐々にすり減っていきます。
このような状態になると関節表面は滑らかではなり、ザラザラ、ゴツゴツとなり、動かすと互いに摩擦が生ずるようになり、これが原因で膝関節に炎症(痛む、熱を持つ、腫れる、水がたまる等)が生じて膝関節症となります。
さらに変形性膝関節症が進むと、次第にO脚が進んでいき、階段のみでなく平地での歩行にも支障をきたすようになります。日常生活上で支障をきたすようになると、かなり変形性膝関節症が進行している可能性が高くなります。
変形性膝関節症の治療には、(1)手術以外の方法と、(2)手術による治療、があります。
2.治療法について
(1)手術以外の方法
①運動療法
当院では、運動療法(筋力訓練と関節のストレッチング)を外来で実技指導し、パンフレットをお渡しして、ご自宅で毎日行っていただくことで、優れた効果を得ています。運動と言ってももちろん、走ったり、屈伸したりする方法ではありません。穏やかに脚を上げたり、下ろしたり、痛くなく、誰でも簡単に行える方法です。この方法を行えば、1か月前後で膝関節症の痛みや腫れは徐々に改善していきます。
②薬物療法
変形性膝関節症の痛みは、主に関節内の炎症によるものがほとんどであり、まずは消炎鎮痛剤を選択します。前述した運動療法と併用することにより1か月前後で効果を得られます。重度の変形性膝関節症の場合や、痛みが慢性的に続いてしまっている場合は、患者の病態に合わせて、その他の鎮痛剤を追加もしくは変更を検討します。2019年にOARSI(国際的な変形性関節症の学会)のガイドラインが改訂され、全身治療である経口薬から局所治療(外用剤や関節内注射)の推奨度が引き上げられ、外用剤の効果が注目されています。
③関節内注射
a. ヒアルロン酸
膝関節での潤滑および衝撃吸収作用のほかに抗炎症作用、鎮痛作用などの生物学的作用があります。5週間にわたる週1回のヒアルロン酸関節注射は、消炎鎮痛剤の内服薬と同等の臨床症状と疼痛の改善効果が認められています。
b. ステロイド
ステロイドは、強力な抗炎症作用を有することから、変形性関節症により発生する炎症とそれに伴う痛みを軽減する効果が強いことが特徴です。しかし、関節内への頻回投与は軟骨や骨破壊を招く危険性も伴うため、適応と注射の頻度には十分な注意が必要です。
(2)手術による治療
人工膝関節全置換術(Total knee Arthroplasty: TKA)
国内では年間約7万人の方が、人工膝関節置換術を受けていらっしゃいます。膝関節症が進行してしまい、膝がO脚に変形してしまい、思うように歩くことができない、歩けても痛みを我慢しながら歩かざるを得ないなどの場合には手術をお勧めします。手術は、人工膝関節全置換術が最も確実な方法です。傷んだ関節軟骨や骨を表面から1~2cmほど削って上の骨(大腿骨)、下の骨(脛骨)にチタン合金製の人工関節に置き換えます。手術時間は1時間半から2時間です。この手術の最大の利点は膝の痛みが完全に近くとれることと、O脚などの変形が治る事です。現在では80歳を過ぎた方でも安全に行えます。手術後数日以内に、手術した膝に全体重をかけて歩く訓練を始めます。入院期間は、リハビリも含めて2~3週間です。
当院では2022年より手術をより正確に行うことができるコンピューターナビゲーションシステムを用いた人工膝関節置換術(TKA)を行っています。
ナビゲーションシステムを用いることで、従来の手術と比較しコンポーネント設置の正確性が上がり、目標設置角度から3度以上の誤差を生じる割合が改善します。当院での症例検討結果においても同等の結果が得られており、術後の患者満足度のさらなる改善に役立つものと考えます。
当院では、手術中の関節周囲多剤カクテル注射を行っており、手術直後の痛みがありません。
従来は、手術後の痛みに対しては、痛み止めの点滴や内服薬などのみで痛みをコントロールしておりましたが、当院では現在、手術中に強い除痛効果のある局所麻酔薬とステロイドを関節の中に注射し、また、切開した皮膚の周辺にも同様の薬剤を注射することにより、劇的に痛みが低減します。これにより、手術直後から数日間の痛みのある時期を苦痛なく過ごすことができ、従来と比較して、リハビリテーションがよりスムーズに行うことができ、より早期の退院を可能にします。
- 診療科のご紹介:整形外科