肩関節疾患

Shoulder periarthritis

肩関節疾患

1.肩関節周囲の痛み

肩関節周囲の痛みは診断が難しいこともあり、『五十肩』と診断され治療を受けていてもなかなか良くならない方がいらっしゃるかもしれません。『五十肩』とは、江戸時代の書物にある「五十歳頃に手腕が痛むが程なく治ることがある。それを五十肩という(略述)」という記述から生まれた言葉で、中高年に起こる肩関節周囲の痛みの総称です。『肩関節周囲炎』という病名も同様に使われることがありますが、これらの中には様々な病態が含まれ、治療方法も異なります。

2.治療法について

石灰沈着性腱板炎

石灰沈着性腱板炎は発作的に激しい痛みを引き起こし、熱感や腫脹も伴います。鎮痛薬内服で改善しない場合はエコーガイド下に注射をし、正確に石灰を吸引することにより疼痛の緩和が期待できます。また肩関節周囲の関節内注射もエコーガイド下に行うことにより確実に注入することができます。

石灰沈着性腱板炎

凍結肩

肩関節の動きが強く制限され痛みが生じる状態を『凍結肩』といいます(狭義での『肩関節周囲炎』ともいわれます)。薬物療法やリハビリテーションが基本ですが、当院では難治性の凍結肩の患者様に対して、外来でブロック注射を打ち非観血的関節受動術(サイレントマニュピレーション)を行うことにより疼痛や可動域の改善を得ることができます。入院も不要で、日帰りで処置が可能です。最終的な可動域や痛みに極端な差は無いという報告もありますが、早期の改善が期待できます。

治療内容神経ブロック麻酔をかけて関節包を徒手的に広げる処置を行います。
麻酔が効いた状態で仰向けに寝て医師が腕を持って肩関節を動かし、縮んだ肩関包を押し広げ、肩関節の動きを改善します。帰宅後に痛みが強くならないように肩関節内に痛み止めの注射も行います。当日は三角巾で腕を吊った状態で帰宅します。
  • 非観血的関節受動術
  • 非観血的関節受動術
  • 非観血的関節受動術

腱板断裂

年齢とともに肩の筋(腱板)が変性・断裂を起こし、腕の上げ下げに痛みが出たり力が入りにくくなったりすることがあります。このような腱板断裂の方もまずはリハビリテーションなどの保存療法を行いますが、症状の改善が見られなければ手術(関節鏡視下腱板修復術)を行います。腱板が擦り切れて肩の骨(上腕骨)から剥がれてしまうので、骨に糸付きの釘(アンカー)を打ち込み、腱板を縫い着けます。術後に関してもリハビリテーションのご案内含めしっかりと経過観察させていただきます。

広範囲に腱板断裂を起こして全く腕が上げられなくなることもあります。そのような場合は腱板を修復することが困難なので、修復術ではなくリバース型人工関節手術を行います。肩関節回転の中心を肩甲骨側に移動、内側に寄せることにより腱板が十分に機能しなくても腕が上げられる構造になっています。

リバース型人工関節手術